株式会社フジクラ
私たちの街に甦れ生態系
はかせ、ツバメのように遠(とお)くまで「渡り(わたり)」をするチョウがいるの?
でんしろう君(くん)、「渡り(わたり)」と言(い)えば、ツバメを思(おも)いうかべるだろうけど チョウのなかにも 渡り(わたり)をするものがいるんだ。そのチョウは、わずか10グラムほどの「アサギマダラ」というんだ。テレビでも、このチョウが話(わ)だいになることがよくあるんだ。このチョウは、とても美(うつく)しいチョウで 野原(のはら)などで見かけることがあるよ。このチョウは、秋(あき)になると、春(はる)に日本(にほん)にきたコースとは 反対(反対)のコースをとんで、南(みなみ)の国(くに)へ とんでいくんだ。さいきん、いろいろな人の努力(どりょく)によって、このアサギマダラの渡り(わたり)のルートなどが、少(すこ)しずつ わかってきたんだ。それによると このチョウの渡(わた)りは、南(みなみ)の沖縄(おきなわ)や台湾(たいわん)、さらに香港(ほんこん)までの およそ2500キロメートルをとんでいたことがわかったんだ。そして、次(つぎ)の年(とし)の春(はる)には、また、日本(にほん)にもどってくるんだ。でんしろう君(くん)、アサギマダラというチョウは すごいだろう。
はかせ、すごいんだね。そのチョウは、どんなチョウなの?
アサギマダラというチョウは、野原(のはら)で ヒヨドリバナやフジバカマなどの 花のみつをすっているんだ。アサギマダラは、春(はる)から夏(なつ)にかけては本州(ほんしゅう)などの1000メートルほどの すずしい高原(こうげん)でたまごを生(う)み、秋(あき)に気温(きおん)が下(さ)がってくると、あたたかい南(みなみ)の国(くに)へと移動(いどう)をはじめ、九州(きゅうしゅう)から沖縄(おきあわ)、さらに台湾(たいわん)など はるか海(うみ)をこえて とんでいくんだ。冬(ふゆ)のあいだは、あたたかい南(みなみ)の島(しま)のどうくつなどで 生活(せいかつ)して、そこで生(う)まれたチョウが、また春(はる)から夏(なつ)に、本州(ほんしゅう)の高原(こうげん)に もどって来(く)るんだ。アサギマダラは、何千(なんぜん)キロも渡り(わたり)をする日本(にほん)で一つしかいない チョウなんだよ。
はかせ、そのチョウの渡り(わたり)のことを 調(しら)べている人たちがいるの?
もちろん いるよ。「アサギネット」というチームの人たちだよ。この人たちは、アサギマダラの羽(はね)に 日付(ひづけ)や場所(ばしょ)などを書(か)く マーキングというやりかたで調査(ちょうさ)をしているんだ。この活動(かつどう)は、1980年(ねん)から 全国(ぜんこう)の人たちによって行われているんだよ。アサギマダラの羽(はね)にマーキングをつけてはなし、次(つぎ)にそのチョウが見つかったところを結(むす)んで とんで行(い)ったルートを調(しら)べているんだよ。 アサギマダラは、羽(はね)の白いところは、「りん粉(りんぷん)」がないから マーキングようのペンで書(か)けるんだ。さいきんの調査(ちょうさ)結果(けっか)で、長崎(ながさき)から台湾(たいわん)にいくルートもあることがわかったんだ。 このように移動(いどう)のルートを調査(ちょうさ)していくと、空(そら)にはチョウたちが通(とお)る道(みち)「チョウの道(みち)」があるようなんだ。また、行(い)きと戻(もど)りで チョウたちがとぶルートが違(ちが)うことも わかってきたんだ。
はかせ、どうしてそんなに遠(とお)くまで飛(と)ぶの?
でんしろう君(くん)、むつかしい質問(しつもん)だね。ただ、このチョウのとぶルートをしらべると 昼(ひる)の温度(おんど)が25度(ど)ぐらいのところを 求(もと)めて移動(いどう)しているようなんだ。それにしても、アサギマダラは、海(うみ)をわたっているあいだ 食(た)べものはどうしているのか、夜(よる)は どこでねむっているのか。また、新(あたら)しく生(う)まれたチョウの命(いのち)は、4か月(げつ)ほどだが、そうすると、渡り(わたり)をしているチョウたちは、いつも新(あたら)しく生(う)まれたチョウたちなんだ。生(う)まれてすぐのチョウが、南(みなみ)の国(くに)や北(きた)の日本(にほん)など はるか遠(とお)いところのことを どうして知(し)っているのだろうね。また、渡り(わたり)の季節(きせつ)がきたことを、どうして知(し)るんだろうね。アサギマダラには、まだまだわからないことが多(おお)いんだよ。また、そこが多(おお)くの人たちの心(こころ)をひきつけているんだろうね。
はかせ、ほかにも渡り(わたり)をするチョウはいるの?
秋(あき)のはじめごろ見かける「イチモンジセセリ」は、アサギマダラほどではないが、大きな移動(いどう)をするチョウとして知(し)られているんだ。ほかにも、ウラナミシジミ、ヒメアカタテハやウスイロコノマチョウなどがいるよ。イチモンジセセリのことを もう少(すこ)し説明(せつめい)しようね。このチョウは、毎年(まいとし)、南(みなみ)の地域(ちいき)から新(あたら)しいチョウへと生(う)まれかわりながら、北(きた)への移動(いどう)を続(つづ)けるんだ。遠(とお)く北海道(ほっかいどう)まで行(い)くものも いるようだよ。でも、関東(かんとう)より北(きた)の地域(ちいき)は 寒(さむ)いので 冬(ふゆ)の季節(きせつ)を生きることができず、すべて死(し)んでしまうんだ。そして、次(つぎ)の年(とし)に、また南(みなみ)の地域(ちいき)から 新(あたら)しいチョウたちが 北(きた)へ移動(いどう)をするんだ。これらのチョウたちは、移動(いどう)を始(はじ)めるその日に チョウになった新(あたら)しいチョウたちなんだよ。でんしろう君(くん)、生きものたちって ほんとうに ふしぎだね。