株式会社フジクラ
私たちの街に甦れ生態系
はかせ、ルリハムシをガラスビンに入(い)れていたら、ビンの上(うえ)まであがってきたんだ。どうして、すべらずにガラスビンをのぼれるの?
でんしろう君、ルリハムシが、つるつるのガラスビンをすべらずに上(のぼ)れるのは、アシのさきに、みえないほど小(ちい)さな毛(け)が、いっぱい生(は)えているためなんだ。これは、ルリハムシの研究(けんきゅう)によってわかったことだけど、ルリハムシのアシのさきを顕微鏡(けんびきょう)で大(おお)きくしてみると、それはちょうど、むかしの「おさむらいさん」のチョンマゲのような形(かたち)の毛(け)が、たくさん並(なら)んでいることがわかったんだ。ルリハムシが、ガラスビンでも、すべらずに上(のぼ)れるのは、アシのさきの毛(け)とガラスとのあいだで、くっつこうとする力(ちから)が、はたらいているからなんだ。
はかせ、その小(ちい)さなチョンマゲのような毛(け)がはえていると、どうしてすべらないの?
それはね、その毛(け)をつくる元(もと)となるものは、「分子(ぶんし)」というもので、目(め)には見(み)えないほど小(ちい)さなものなんだ。ガラスにも、その元(もと)となる「分子(ぶんし)」があるんだよ。その毛(け)の分子(ぶんし)とガラスの分子(ぶんし)とのあいだに、おたがいに「ひきあう力(ちから)」、「分子間力(ぶんしかんりょく)」というものがあるんだ。このひきあう力(ちから)によって、ルリハムシは、つるつるとしたガラスビンのかべでも、すべらずに上(のぼ)っていけるんだ。
こん虫(ちゅう)はみんな、ルリハムシのようにガラスビンをのぼれるの?
いや、そうではないんだ。これができるのは、こん虫(ちゅう)でも、ごく一部(いちぶ)なんだ。ところで、でんしろう君は、「ヤモリ」を見(み)たことがあるかい? ヤモリは、トカゲによくにていて、窓(まど)や天井(てんじょう)に、くっついているよね。このヤモリも、ルリハムシとおなじように、ガラスのうえでもすべらないで歩(ある)くことができるんだ。
はかせ、ヤモリの「アシ」にも小(ちい)さな毛(け)がはえているの?
そうなんだ。ヤモリの研究(けんきゅう)でわかったのは、ヤモリのアシの裏(うら)にも、目(め)には見(み)えないほど小(ちい)さな毛(け)が、かぞえきれないくらい生(は)えていたんだ。このヤモリのアシの裏(うら)の毛(け)の一つひとつが、ガラスにくっつくんだよ。ある会社(かいしゃ)では、このヤモリのアシの裏(うら)をまねて、よくくっついたり、はなれたりするこれまでにはない新(あたら)しいテープをつくったんだ。最近(さいきん)は、この「ヤモリテープ」のように、いきものたちのすぐれたところをまねて、これまでになかったような「新(あたら)しいもの」をつくる研究(けんきゅう)がされているんだ。でんしろう君、これからどんなものができるか、たのしみだね。
ヒトのために、いきものたちが役(やく)にたつなんて、はかせ、いきものってすごいんだね。